掛物(かけもの)

2018.6.1

用語集テンプレ

茶席の床の間には、通常は軸装された掛物が掛けられます。
掛物は、紙や裂で表装して掛けるように仕立てられたものをいいますが、大きくは、書蹟と絵画、そして両者が一体となった画賛に分けられます。
古くは、書蹟は「掛字」、絵画は「掛絵」、または「絵掛物」と呼ばれたそうです。

書蹟や絵画を表装して掛けることは、ほかの多くの文化と同様、中国からもたらされました。
平安時代に密教の伝来とともに日本にもたらされたとされ、仏前を荘厳する仏画が中心でした。

やがて禅宗の盛行にともなって中国の絵画や墨蹟、いわゆる「唐物」が多く舶載され、室町時代に入ると、日本風の表装を施すようにもなり、書院荘りの中心的な役割を果たすことになりました。

そして、室町時代末に草庵茶の時代を迎えると、絵画や墨蹟にとどまらす、懐紙や色紙、消息などが、さらに江戸時代に入ると短冊や写生画なども茶席の床の間に掛けられるようになります。
また、二幅対、三幅対などを拝見することもありますし、扇面が掛けられることもあります。
ひと口に掛物といっても、内容は多岐にわたっています。

初期茶道の時代の茶会記を紐解いてみますと、掛物の記載のない茶会も散見され、当初は必ずしも掛物が茶会の中心ではなかったことを教えてくれます。

やがて茶道の形式が確立されると、利休の茶道概念を記した「南方録」に「掛物ほど第一の道具はなし、客・亭主ともに茶の湯三昧の一心得道の物也、墨蹟を第一とす」と掲言されたように、茶席では掛物、わけても墨蹟が第一に重視されるようになります。
それは、掛物の筆者、書かれた文字、さらにその字句が生まれた背景に対する一礼です。
「南方録」にも前掲の句に続いて「其の文句の心をうやまい、筆者・道人・祖師の得を賞翫する也」とあります。

茶事・茶会において、掛物は亭主の意図するところや、季節感を端的に表現する第一のもので、数寄者の間では「開炉一行、春懐紙、夏は短冊、秋は文」などともいわれるようですが、書かれた内容に加えて賞翫すべきものに、表装があります。
本紙だけではなく、一文字・風帯、中廻しなどに使われた裂地の鑑賞も茶席ならではのことといえましょう。
表装には真・行・草の約束があり、茶席の掛物では行の表装が一般的ですが、歴代家元の好み表具・好み裂なども茶席の話題となります。

●掛物の格
書画などを仕立てて掛物にすることを表装といい、一般には表具といいます。
鎌倉時代に宋の様式・技法が伝わり、江戸時代初期には表具師といわれる専門の職人が現れました。
それ以前には表具のことを表補衣(ひょうほえ)といい、表具師を表補衣師と称していました。
表具には裱褙(ひょうほえ)・幢褙(どうほえ)・輪褙(りんほえ)の三種があり、その中でも仕立かたで真・行・草に分かれています。

裱褙(ひょうほえ) ・・・
真の表具です。
上下が分かれず、中廻しによって本紙を囲んでいる総縁になっています。
神号・仏号・仏画・画像などに多く用いられます。

幢褙(どうほえ) ・・・
行の表具です。
もっとも一般的なもので、総縁を天地に分けたものです。
座敷表具、大和表具と称され、宸翰(しんかん)や古筆、絵画などに用いられています。

輪褙(りんほえ) ・・・
草の表具です。
幢褙の柱を細くしたものです。
茶人の書画や大徳寺の僧侶の墨蹟の表具に用いられることが多く、茶席でよく見られることから茶掛表具と称されます。 

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